南ア北部 北岳(3193m)、中白根山(3055m)、間ノ岳(3190m)、西農鳥岳(3051m)、農鳥岳(3025.9m)、広河内岳(2895m)、大篭岳(2767.0m)、白河内岳(2813m)、笹山(2733m) 2014年7月25〜27日  カウント:画像読み出し不能


所要時間

7/25
6:22 広河原−−6:26 広河原山荘 6:38−−6:58 御池小屋分岐−−8:26 御池小屋−−9:29 森林限界(休憩) 9:49−−10:07 小太郎山分岐−−10:34 肩の小屋 12:02−−12:12 水場 13:58−−14:16 肩の小屋

7/26
3:54 肩の小屋−−4:25 北岳 5:21−−5:57 北岳山荘−−6:26 中白根山−−7:10 間ノ岳(休憩) 7:41−−8:26 農鳥小屋−−9:07 西農鳥岳−−9:33 農鳥岳(休憩) 10:06−−10:32 大門沢下降点−−10:59 広河内岳−−11:16 2740m鞍部 11:25−−11:48 水場(休憩) 12:12−−12:55 2740m鞍部 13:03−−13:47 大篭岳北側(幕営)

7/27
4:16 大篭岳北側−−4:19 大篭岳−−4:54 白河内岳−−5:43 笹山北峰(休憩) 6:05−−6:11 笹山南峰(休憩) 6:21−−6:49 2320m肩−−7:27 1603m水場分岐 7:30−−8:17 白河内(休憩) 8:30−−8:41 奈良田

場所山梨県南アルプス市/南巨摩郡早川町
長野県伊那市(旧長谷村)
静岡県静岡市
年月日2014年7月25〜27日 2泊3日幕営
天候7/25:晴 7/26:晴 7/27:ガス後晴
山行種類一般登山
交通手段マイカー+バス
駐車場奈良田第1駐車場を利用
登山道の有無あり
籔の有無池ノ沢で短区間だがハイマツ籔あり
危険個所の有無無し
山頂の展望各ピークとも森林限界を超えて大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
ここをクリックしてダウンロード
コメント数年前に歩いたのと同じコースを縦走。今回は核心の2日目が快晴で、北岳や間ノ岳からは立山剱までくっきりと見ることができた。肩の小屋の水場は細かったが出ていた。池ノ沢の水場は前回同様の水量で充分に利用可能。今回はまともなGPSで正確なログを取得できたので水場の位置も正確。稜線から水場まで標高差300m弱を下らなければならないこと、ハイマツがはみ出ている以外は利用価値大。笹山〜大門沢下降点間は一般ルートではないが、今ではそこそこ登山者がいるしケルンが多数存在する


ルート図。クリックで等倍表示


奈良田第1駐車場 広河原バス停
平日で人は少なめ すっきりと北岳が見える
大樺沢雪渓はかなり後退 吊橋からスタート
広河原山荘 大樺沢、御池小屋方面分岐
第2ベンチ 第1ベンチ
急な登りが続く やっと傾斜が緩む
沢を横断
白根御池小屋
御池はまだ雪が残っていた ここを登る
森林限界ぎりぎりで休憩 森林限界は約2750m
森林限界突破。お花畑に変わる 右俣コースが合流
空が青い! 稜線に到着
小太郎山分岐
北側の展望(クリックで拡大)
肩の小屋
肩の小屋到着時のテント場。2週間前は雪で埋もれていた
水汲みへ お花畑を標高差100m下る
水は細かった 同じく水汲みに来た男性
マイホーム。夏山ではシングルウォールテントは絶滅危惧種 夕方はガスに覆われる
テントがここまで増えたがこれで全部。さすが平日
まだ暗いが出発 小屋前
徐々に明るくなってくる 北岳山頂が見えた
北岳山頂 なんと山頂に猿がいた
東の空 日の出
日光白根が見えた 北岳の影が恵那山へと延びる
北岳から見た富士山 北岳から見た木曾御嶽
北岳から見た南側の展望(クリックで拡大)
北岳から見た西側の展望(クリックで拡大)
北岳から見た中央アルプス(クリックで拡大)
北岳から見た乗鞍岳
北岳から見た八ヶ岳
北岳から見た北アルプス(クリックで拡大)
北岳から見た北信の山
間ノ岳へ向かう どんどん下る
北岳山荘。テント場の雪は消えていた 中白根山に登る
自分の影 中白根山
中白根山からの展望(クリックで拡大)
中白根山から見た北岳 中白根山から見た間ノ岳
これが間ノ岳山頂ピーク 間ノ岳山頂
間ノ岳から見た大唐松山 間ノ岳から見た北岳
間ノ岳から見た立山、劒岳 間ノ岳から見た笊ヶ岳
間ノ岳から見た青薙山、稲又山 間ノ岳から見た小無間山〜大無間山
間ノ岳から見た南側の展望(クリックで拡大)
間ノ岳から見た北側の展望(クリックで拡大)
東〜南〜西のパノラマ写真(クリックで拡大)
間ノ岳から見た槍穂(クリックで拡大)
間ノ岳から見た乗鞍岳
間ノ岳から見た農鳥岳と白根南嶺
次は農鳥岳へ向かう 広大な斜面を下る
間ノ岳を振り返る 農鳥小屋
農鳥小屋付近から見た熊ノ平小屋 農鳥岳への登り
きつい登りが続く 農鳥小屋を見下ろす。既にテントが1張あり
振り返る。間ノ岳、でかい
西農鳥岳は2つのピークがあるが山頂標識のあるピークは地形図の西農鳥岳と位置が違う
黒檜山。熊ノ平からも1度行ってみたい 肩に出た
3050m峰 あちらのピークが3051m峰(西農鳥岳)
3051m峰(西農鳥岳)
西農鳥岳からの展望(クリックで拡大)
農鳥岳へ向かう 農鳥岳山頂
農鳥岳から見た西農鳥岳 農鳥岳から見た大唐松山
農鳥岳から見たパノラマ展望写真(クリックで拡大)
農鳥岳から見た塩見岳 農鳥岳から見た南ア南部
農鳥岳から見た白峰南嶺 農鳥岳から見た三伏小屋
大門沢下降点へ下る 稜線直上ではなく東側を歩くことが多い
大門沢下降点 こちらが南嶺入口。踏跡はハイマツに隠れる
稜線に出ればハイマツとはおさらば 広河内岳へ突き上げる
広河内岳山頂 広河内岳から見た農鳥岳
広河内岳から見た塩見岳 広河内岳から見た大門沢下降点
広河内岳から見たパノラマ展望(クリックで拡大)
広河内岳から見た白河内岳
鞍部へと下る 水を汲みに池ノ沢を下る
石が積み重なった谷 ケルンあり
古いペイントもある こんな目印も
石の上に道あり ここは寝たハイマツなので問題なし
ここはハイマツに突入する ハイマツを抜けるとダケカンバ樹林
微妙に凸凹があるが幕営できそう またハイマツに突っ込む
傾斜が緩む 肩のような平坦地登場
ケルンあり 平坦地の左奥が水場
斜面に水が流れている 流れは浅いが水量は多い
水を汲み終えて登り返し 森林限界は暑い!
広河内岳へ延びる廃道 もうすぐ鞍部
広河内岳へ向かう男性 もう一人広河内岳へ向かう男性がいた
鞍部にデポしたザック 大籠岳向けて出発
概ね緩やかな稜線が続く 2人は広河内岳山頂へ到着
2772m峰より
2700m鞍部のテント適地。西風が当たるのでパス 大籠岳
大籠岳北側の2720m付近で幕営 縦走路から見るとこんな感じ
大籠岳南側にもテントあり 薄明るくなって出発
大籠岳山頂 新しめの標識か?
ガスって強風 大籠岳を越えると赤い岩が多くなる
振り返る。強風にガスが流れる 相変わらず広い稜線が続く
富士山 ガスの向こう側に朝日が登る
斜面が赤く染まる 白河内岳山頂
白河内岳山頂のパノラマ写真(クリックで拡大、ガスのためピンボケ気味)
白河内岳山頂から見た大籠岳方向 白河内岳山頂から見た塩見岳(ガスの中)
白河内岳山頂から見た篠山 広い斜面を下る
白河内岳を振り返る 笹山北峰山頂
樹林帯直前のテント場 ここにもあり
笹山が近づく「 樹林帯に入る
シラビソ樹林に変わる ハイマツの切り開き
2680m峰 2680m峰から見た2682m峰
古い標識だろう シラビソ樹林が続く
シラビソが細くなってくる 再び森林限界
笹山北峰直下 笹山北峰山頂
笹山北峰のパノラマ展望(クリックで拡大)
笹山北峰から見た白河内岳。ガスが晴れている
笹山北峰から見た南側
南峰に向かうと再び樹林へ 笹山南峰
三角点 奈良田へ下り始める
樹林の隙間からの展望 濃いシラビソ樹林が続く
2320m肩のテント適地。でも水が無いのが痛いところ
2320m肩は合計4張のテントとツェルト 標高が書かれているのは助かる
2256m標高点下のガレ ガレからの展望
北岳はまだガスが絡んでいる ワイヤーロープ
帰りに回収するんだろうなぁ 水場入口。この日はテントは無し
拾ったので木にぶら下げておいた 照葉樹が目立つようになる
索道跡 水力発電施設
監視路で北斜面をジグザグに下る 登山口
車道が作り直されていた 発電所
橋は無いが石を渡って白河内を渡る 吊橋
県道にはずらっと路駐の列。トンネルまで続いていた
駐車場到着


 今週は仕事の都合で金曜日がお休みとなり3連休。3日とも天気がよさそうなのでテントを背負って出かけることにする。場所をどこにするかだが、南ア南部を考えたがヒルが出たり半端な歩きになったりとしっくりこない。北アは高速料金がかかるのでパスし、結局はまた白根三山となった。数年前に歩いた三山+白根南嶺だとちょうどいい。奈良田に車を置いて広河原からスタート、肩の小屋で初日幕営し、翌日は白根三山縦走し南嶺に突入、池ノ沢に下りて水を補給して大篭岳付近で幕営、最終日は笹山から東尾根で下山だ。2日目は丸1日が森林限界の稜線歩きを楽しめる。

 この夏2回目の奈良田へ。木曜夜なので第1駐車場はまだ空きがあったが早朝には満杯状態に。まだ薄暗い時刻、バス始発の1時間前に待ち行列に加わって場所を確保、先頭から7,8人目だった。このうち4人がタクシーに乗り移ったのでトップ5に。芦安の林道通行止めで奈良田もタクシーOKになったらしい(以前はNG)。

 やがて空のバスが到着したが第1駐車場はスルーして第2駐車場へ。次に4台のバスがやってきたが乗客がいるではないか。そう、これは甲府駅始発のバスだった。ほぼ満席の3台が第1駐車場で停車、空きが多い残り1台は第2駐車場へ向かった。なんと第1駐車場で座席に座れたのは12人だけという想定外の状況が発生。今は変則的なバス運行だろうから今後どうなるか分からないが、少なくとも平日の場合は第2駐車場の方が座れる確率は高いだろう。もしくはタクシーを捕まえて乗るのが賢明だ。話によるとタクシー料金もバス料金とほぼ同じだという。

 満員のバスに揺られて広河原へ。今回もピーカンで北岳バットレスがよく見える。広河原山荘前で朝飯を食って出発。今回は肩の小屋が初日の目標地点であり、登りは御池小屋経由のルートにした。というのもここなら最終水場の標高が高いこと、最初に一気に標高を上げるので日中気温が上がる前に涼しいエリアに入れること、御池小屋まで樹林帯が続き日差しが遮られて涼しいことなどが理由だ。しかし大多数の登山者は大樺沢方面へ吸い込まれ、御池小屋方面へ入る登山者は圧倒的少数派だった。

 2週間前に歩いた道なので様子は良く分かっている。しばらくは急な登りの連続。樹林帯で展望が無いのは残念だが、今の時期は日差しが無く涼しい方のメリットが大きい。2つのベンチを通過して巻き道に入り、沢を通過するところで濡れタオルの汗を洗い流してさっぱりする。そのままほぼ水平移動で御池小屋。テントがいくつか張られている。2週間前は完全に雪に覆われていた池は半分くらい水面が出ていた。また、2週間前に残雪があった登山道下部の雪はすっかり消えて無くなっていた。

 ここからはしばし日差しに焼かれながら開けた急斜面の登り。続々と登山者が下ってくる中をゆっくりと登っていく。周囲は根曲がりダケカンバ樹林だが登山道がある場所だけは防火帯のように樹木が無いので日陰もなく暑い。扇で扇ぎながら歩く姿は山では目立つ。でも気温がそこそこ低い場所で無風状態だと体感的にかなり効果的なのだ。左手には大樺沢の雪渓。2週間前と比較して明らかに雪が減っている。急斜面の区間はほぼ雪が消えているように見えるので、もう登りはアイゼン不要かも。

 やがてダケカンバ樹林帯に入り日陰にありつくが、休憩は森林限界まで上がってからすることにしてなおも歩く。もうすぐお花畑というところで休憩。ここが最後の木陰で涼しく休憩できる最後のオアシス。登りでは汗だくになる気温でも日陰で体を休めればたちまち汗が引く。この時間帯は下りの人は減って、疲れた足取りの登りの人の方が多かった。九州から来たというパーティーもゆっくり上がっていった。

 休憩を終えて出発。すぐにお花畑に変わり森林限界を突破。2週間前と変わらず花盛り。右俣コースが合流しジグザグを切って標高を上げる。やがて小太郎山分岐に出て稜線へ。西から北の視界が開けて北アルプスの展望を期待したが、そちら方向は雲が湧いて見ることはできなかった。残念。稜線は西寄りの風が吹き抜けて日差しがあっても体感的には涼しかった。

 あとは肩の小屋まで登るだけ。高校生らしい団体が下ってくる。そうか、もう夏休みの時期だからなぁ。でも大学のパーティーらしき集団は今回は見られなかった。お疲れの登山者を数人追い越して肩の小屋に到着。時間的、体力的にはこのまま北岳山頂に登って北岳山荘で幕営してもいいのだが、北岳山頂からの展望は明日朝の方が期待できるし、あまり先に進んでも明日以降の行程が楽になり過ぎて計画のバランスが悪い。当初計画どおりここで幕営とする。

 2週間前はまだ雪に埋もれていた小屋東側に下がったテント場には既に数張のテントあり。幕営の手続きを済ませて適度なサイズの場所を確保。しかし天気が良すぎて日差しが強くテントの中は暑くて入れない。東からガスが上がってくるが西寄りの風に吹き戻されて頭上の太陽には届かない。

 お昼頃に水汲みに東斜面を下ったらガスの中に突入して涼しい! こんなことならもっと早く水汲みに行って水場で涼んでいればよかった。水量は渇水の数年前と大差なしで細かったが、水は小屋で1リットル/\100で購入できるので、わざわざ標高差100mを往復する利用者はほとんどいないので、時間をかけて水汲みしても問題なし。1時間ほど涼んでいると1人の男性が水汲みにやってきた。地元山梨県内の人で、今回は山梨百名山の一つ、小太郎山が狙いだと言っていた。完全制覇まで残り僅かで笊ヶ岳、笹山、鋸岳とお決まりのパターンだった。山梨に住んでいるので笊は老平から、鋸岳は釜無川からとなろう。どこも技術的な難しさはないが体力と時間が必要な山だ。涼みを兼ねて何だかんだと1時間くらいしゃべっただろうか。

 水場からテント場に戻るとやっぱり暑かった。今度は稜線に出て風に当たって涼む。西寄りの風なので東斜面のテント場には風が来ないのであった。この日は金曜日で登山者は少なく、東側のテント場だけで全てのテントが収まったが、明日はこうはいかないだろう。午後遅くにガスが上がってきて日差しが遮られテント内に入れるようになり一安心。夕立が来ることはなく夜中には満天の星空に変わっていた。

 翌朝、北岳山頂で日の出を見るために3時前に起床して4時に出発、まだ真っ暗だが東の水平線付近は僅かに赤みがさしてきた。見上げると先行登山者のライトの光がいくつも見えている。昨日から吹いていた西寄りの風は弱く、半ズボンで歩き始めても大丈夫だ。気温はこの時期にしては高い+10℃もあった。

 暗闇の岩稜帯は足跡が残らずルートがわかりにくいが、藪山に比較すれば人間臭さは格段に濃くどうということはない。既に息が荒く立ち止まっている登山者を何人か追い越す。まもなくライトが不要な明るさになるだろう。

 もうすぐ山頂というところでライトが不要に。偽ピークを右から巻いて登り返すと北岳山頂。既に10人近くが山頂で日の出を待っていた。私は日の出の時刻を勘違いしていて4:30だと思ってそれに合わせて山頂到着時刻を設定したが、今の時期は少し遅れて4:45分くらいだった。地平線付近はモヤがかかって太陽が見えるか少々不安だったが、モヤの上ではなくモヤの下から太陽が顔を出した。たぶんどこかの山の稜線から出てきたのだろう。2週間前には見られなかった光景。やはり山頂から見る日の出はいい。今日の空気の透明度は最高に近く、北アは立山剱、白馬岳までくっきり。妙高、火打、焼山も雲海の上に頭を出していた。北東方向には1つだけ雲海上にドーム型のピークが見えていたが、後で調べたら日光白根だった。

 1時間ほど山頂に滞在して大展望を満喫し出発。今日は大篭岳付近までの予定なので比較的のんびりできるので急ぐ必要はない。天気予報もにわか雨の可能性はあるが基本的に天候の崩れはないと告げている。その代わり下界の最高気温は軒並み35℃を越える予想で甲府の予想最高気温は38℃とのことだった。

 北岳山荘へ下っていくと次々と登山者とすれ違う。山荘のテント数は10張程度と少ないが、今日の午後から夕方は賑わうだろう。3000m稜線の弱い西風に吹かれながらで、直射日光の下でもそれほど汗をかかずにすむ。今日は丸一日森林限界の稜線歩きだ。

 緩やかに登って中白根山山頂。写真だけ撮影して間ノ岳を目指す。私と同じく間ノ岳に登る人、逆に間ノ岳から下ってくる人とさまざま。戻ってくる人は軽装が多く、肩の小屋か北岳山荘からのピストンらしかった。

 最後に突き上げて今年2回目の間ノ岳山頂。まだまだ雲が湧かずに大展望が楽しめた。黒檜山は低い位置。ここから見ると熊ノ平から簡単に往復できそうに見えるが実際はどうだろうか。三峰川沿いの林道に車止めが設置された今は、熊ノ平からの往復というのも日程的に大きな損はないだろう。南に目を向けると目の前の塩見岳の左側には荒川三山に赤石岳。ここも明日は賑わうだろう。農鳥岳方面から軽装のトレラン姿の男性がやってきたが、まさか今日奈良田を出発してこの時間に間ノ岳だろうか? そうとしか思えないが恐ろしい速さだ。

 軽く休憩して農鳥岳へ。広大な間ノ岳南斜面を下っていくがガスられたらイヤな場所だが今日のような快晴なら問題なし。農鳥小屋で水を汲むか少し悩んだが、ここでザックを重くするよりも池ノ沢で往復1時間かけても荷物が軽いまま進んだ方が有利と判断、素通りした。小屋には既にテントが1張あった。

 農鳥小屋から農鳥岳への登りは毎度の如くきつい。ゆっくりでも足を止めないよう一定ペースで登っていく。ようやく傾斜が緩んで稜線の西側を巻いて稜線に乗り、左に曲がった最初のピークに西農鳥岳の山頂標識が立っているが、残念ながらここは地形図の西農鳥岳の位置と異なる。この東側のピークが地形図の山頂(3051m標高点)だ。みんな標識ピークで休憩しているが私は通過して東のピークに立つ。休憩は農鳥岳で取ることにして写真撮影して先に進む。昨年登ったときには大パーティーで渋滞しているのが見えてグループがそろそろ農鳥岳に到着する頃を見計らってここを出発した記憶があるが、今日は人は少ない。

 もったいないが標高を落とし、斜めに上がって高度を取り戻して農鳥岳山頂。ここまで来ると白根南嶺は目の前で最終目的地の笹山も見える。ここにいる登山者の多くは大門沢に下るだろうが、白根南嶺に足を踏み入れるのは私だけかな。皆、先ほどの「偽」西農鳥岳で休憩したらしく、ここでは短時間の休憩で下っていった。

 私も出発。しばらくは稜線東側をトラバースするようなルートなので西風が遮られて暑い! 大門沢下降点は黄色い櫓が立っていて鐘がぶら下がっているのは変わらない。案の定、ここから白根南嶺に向かうのは私だけで、ハイマツがはみ出した狭い登山道に足を踏み入れるが、道が稜線に出ると岩稜帯に変わってハイマツともおさらば、自由気ままに歩けるようになる。道は薄いが基本的に尾根を外さなければ良いので、わざわざ薄い道を探しながらでなくても大丈夫だ。ただし、藪山に慣れた目だったらこの程度の道なら見失うことはまずない。

 広い稜線を進むと下ってくる人発見、下降点に荷物を置いて空身で広河内岳を往復してきた男性だ。ここまで来て標高2800mを超える広河内岳に登らないのはもったいない。ちょっと立ち話してから出発すると次なる下山者。いかにもトレランの姿であり、まさか今日奈良田を出発して笹山経由でここまで来たのか聞いてみるとそのとおりだった。恐るべきトレラン。このコースも日帰りにしてしまうのだ。

 なおも登りを継続し、数年ぶりの広河内岳山頂。無人の大展望の山頂。昔は東海フォレストの山頂標識は無かったのだが。でも人が少ないのは変わらない。ここまで来ると白河内岳は目の前だ。その前に眼下に見える池ノ沢に水汲みに行かなければ。ここからだと樹林の中になるので水は見えない。

 広河内岳から池ノ沢に直接下る廃道もあるが、大ザックを担いで2740m鞍部まで登り返す必要があるのでその道は利用せず、縦走路を2740m鞍部まで下り、ザックをデポして小さなアタックザックに容器類を入れて軽装で下る。鞍部にザックを転がしておくが、他の人が見たら何だ?と不思議に思うだろう。

 谷筋は道はないが石がゴロゴロ積み重なった河原のような状態で、僅かな距離だが地を這うハイマツの帯があってできるだけ薄そうな場所を通過した。それから先はしばし石が重なった谷を下る。ケルンが散見されるのでここを下る人もたまにいるのだろう。広河内岳から下ってくる廃道と合流すると道型がやや明瞭になるが、積み重なった藪の無い石の上のルートなので大差無し。

 石の上を下っていくとやがてハイマツが登場、標高が落ちているので今度は這うハイマツではなく腰から胸の高さに立ったハイマツだ。地面付近は道型が残っているのでハイマツの枝の下には道の空間が残っており、全くのハイマツ藪よりは歩きやすい。ハイマツ藪は20mほど続く。

 ハイマツを抜けると森林限界を割ってダケカンバの樹林帯に変わり、地面付近は土が出ていたり柔らかそうな草に覆われた場所があったりとテントが張れそうな植生に変わるが、そこそこの広さの平坦地がない。少しだけ土木工事をすればいいテントサイトになるのだが。快適とはいかないが1人用テントなら何とか張れそうなスペースは何ヶ所かあった。

 さらに下るとまた立ったハイマツが登場、強引に突っ切ったが道型がなく、どうも迂回ルートがあったらしい。再びダケカンバ樹林に変わり、自然のダムのように谷の傾斜が無くなった平坦地が登場、少し地面がデコボコしているがここが一番幕営に適した場所だろう。ただし、谷の真中なので夕立で大雨になると水没する可能性があるが。標高は約2480m。鞍部から300m近く下っている。

 テント適地から左側奥の斜面を見るとコケに覆われた一帯があり、そこが前回水を汲んだ場所だ。ここから水の音は聞こえないが斜面をトラバースして近づくとちゃんと水が流れていた。ここは谷地形ではなく斜面に流れる沢の源頭であり、水流が浅く広いので流れの音が小さいらしい。また、深さが無いので大きな容器で水を汲む場合は石の上を水が越える場所など少し場所を選ぶ意必要がある。でも水量は充分で北岳肩の小屋の水場より10倍は早く汲める。今回は虫がまとわりついて鬱陶しかったので汗を洗い流してから虫除けを露出した肌に塗った。水を汲み終わって平坦地でしばし休憩。これで明日の分まで充分な水を得られたのでどこでも安心して幕営できる。

 帰りはなるべく汗をかかないようゆっくりと登り返す。ハイマツの海に突っ込んでハイマツの葉のブラシに擦られると花粉が飛ぶ。今が花の時期らしい。どうやらスギ花粉と違って私には影響は出なかった。森林限界を超えて石ゴロゴロの谷を歩くのは暑かった! 稜線を見上げると単独男性が2名、鞍部から広河内岳方面に登っていった。南嶺は整備されていなくて小屋も水場も無いので人は少ないが、今の時期は意外に入山者がいるようだ。たぶん昨日奈良田から上がったか新倉から伝転峠経由で北上してきたのだろう。残念ながら私が鞍部に到着する頃には通過してしまった。

 鞍部のザックを回収して水を入れると重いが、今日はもうさほど進まないしこの先はアップダウンが小さいので体力の消耗は最小限で済む。日差しが強くて暑いが稜線上は西風が吹きぬけるため体感的には涼しい。ただしこの風だと稜線上ではテントを張るのは苦労するので、風が避けられる稜線東側にテント場を探す必要がある。前回はハイマツ藪を分けて2700m鞍部の2重山稜の谷に張ったが、今回は大篭岳北側直下を計画している。前回縦走したときにここに張っていた人を見たが、風が避けられるしアプローチもよくて平坦だし、なかなかいい場所に見えたからだ。

 緩やかな稜線をケルンに従って進んで2700m鞍部へ。見覚えのある光景で稜線上にも2箇所くらい砂地で平坦な場所があるが思いっきり風が当たるのでパス、南嶺は尾根が広くテントを張れそうな場所はいくつもあるが、西風が当たらずデコボコが無い好条件の物件はそれほど多くはない。

 登り返して稜線直上より西側を巻き気味に進み、大篭岳山頂の高まりと山頂標識が見えるほど近くまで来ると、左側の低い稜線の東側にハイマツ帯にポッカリと空いた砂礫地が登場、ここが目的地だ。途中にハイマツがあるが踏跡ができていて藪漕ぎ不要。西風は大部分が遮られて設営に支障はなし。やっぱりいい場所だ。ただし、まだ日差しが強くてテントを設営しても暑くて中には入れない。近くに小さなダケカンバあったが葉が少なく大した日除けにならないので、防寒着やシュラフを枝に乗せて日陰を作りその下で昼寝。なかなか快適だった。夕方、日が傾いてテントが日陰に入ってから人間もテントに入った。この日は大気の状態が安定し、夕方になってもガスが上がらず暑かった。大篭岳を挟んだ反対側の稜線には緑色のテントが見えていた。いかにも風が当たりそうな場所だったが大丈夫だっただろうか。

 夜になっても雲は出ず満天の星空。天の川もはっきり見えて、30分ほどで4,5個の流星も見えた。夜半になり風が強くなって時々テントが揺れるようになったが直接風が当たる場所ではないので心配するほどではなかった。

 翌朝、テントの外に顔を出すとうっすらと星は見えているが雲が掛かっているようだ。雲というより風に乗って流されていくガスのようだった。風はますます強くなったがテント設営場所が良かったので撤収時もさほど苦労せず作業完了。周囲は徐々に明るくなり地形が見えるようになったが、昨日とは打って変わって稜線はガスに覆われていた。この標高でガスの中だから白根三山もガスの中に違いない。

 僅かに歩けば大篭岳。ほぼライト不要の明るさとなり、道が薄くてケルンに頼るこの場面では助かる状況。下ると昨日見えたテントの主の他に窪地にテントを張っていた人もいた。両者とも既にテントを撤収して出発間際だった。窪地の主は私が笹山方面に歩くのを見て「戻るのですか?」と声をかけたが、広河原からの縦走だと応じる。天候を心配していたが、過去の経験からしてガスは朝だけでそのうち晴れるのではなかろうかと伝えた。

 白河内岳までどこでも歩ける森林限界のだだっ広い稜線を進む。風はかなり強く時々体がふらつくが、この地形では行動に支障が出るほどではなかった。痩せた岩稜ではイヤらしい風速だろうが、ここはやたらと広い尾根だからコケても危険はない。

 丘のようななだらかなピークをいくつか越えているうちに日の出を迎えた。出発時よりガスが薄くなって時々霧が晴れることもあり、確実に回復傾向だ。白河内岳直下で朝日を浴びて斜面が赤く染まる。

 白河内岳山頂は相変わらずだだっ広く石だらけでテントを張るのにはあまりよろしくない場所だ。ガスられたら下りは厄介だが今はガスはもっと高い位置で視界は良好だ。ケルンに導かれて県境尾根より南側の広大な斜面を下っていく。まあどこでも歩けるのだが、所々にハイマツの島が点在し、何も考えないで下るとハイマツで行き詰まったりするため、素直にケルンに従うのが無難だ。やがて進路は左に変わって水平移動し、ダケカンバの細く低い樹林帯に入る手前でテント適地あり。西風も避けられそうだった。

 密生した樹林帯に入ると登山道だけが歩きやすい空間が空いているので、これまでの森林限界と違ってルートが明確になる。すぐに植生はシラビソに変わって木の高さも高度が落ちると急激に高くなる。シラビソ樹林の中の方が幕営に適当なのだが、なかなか土が出た適度な広さの空間が無いのが難点だ。

 2680m峰手前でシラビソ樹林が終わってハイマツの海へ変わり、ここは昔の切り開きがあって寝たハイマツの幹の上を歩く。刈られていなかったら結構なハイマツ漕ぎになる場所だ。先ほどまでのシラビソ樹林と標高が変わらないのになぜここはハイマツなのだろうか。

 ハイマツ帯を抜けると大きく開けた砂礫地に出て2680m峰へ緩やかに上がる。ピークは岩稜帯で足跡が残らないのでこれまたケルンが役立つ。ここも下手にルートを外すとハイマツ藪が待ち構えている。ピークを下ると短いハイマツ区間を通過してシラビソ樹林へと入る。以降は笹山北峰直下までシラビソ樹林を歩くが、その間に1箇所だけテントが張れそうな場所があった。

 笹山北峰直下で急激に高度を上げて再び森林限界を超えると大展望の笹山北峰山頂に到着。まだ今日はお客はいないようで無人の静かな山頂だった。天候は確実に回復傾向で白河内岳ではガスの中で見えなかった塩見岳はすっかり晴れ上がっていた。荒川三山はまだ稜線は雲の中。でもたぶんそのうち晴れるだろう。

 山頂で休憩していると3人パーティーが上がってきた。当然、前日土曜日に笹山東尾根から入って途中で幕営し、朝から登ったのだろう。3人揃った写真撮影を頼まれたので塩見岳をバックに撮影。彼らはすぐに戻っていった。他に2名の男性がやってきたが、こちらは山頂で休むことなく北上していった。ということは今日中に大門沢下降点から奈良田まで下山だろうか。ご苦労様。昨日は午後だけで4名、今日は2名の縦走者を見かけたので、以前より白峰南嶺は賑やかになったのかもしれない。

 私は逆方向で笹山東尾根を下る。再び無人になった北峰を後にして笹山南峰へ。こちらは先ほどの3人以外に人がいて合計10人くらい。ここでも写真撮影を頼まれ、樹林の上に頭を出した白河内岳をバックに撮影。地元山梨県旧竜王町の「竜王歩こう会」とのことで、メンバーの1人がここ笹山で山梨百名山達成とのこと。昨日北岳肩の小屋水場で話した男性の残りにも笹山があったが、小屋泊まりが中心の登山者にとっては笊ヶ岳と並んで行きにくい山に違いない。

 団体様は冷たい西風を避けて僅かに山頂東側に下った場所で休憩、私はこれから始まる長い下りに備えて防寒着を脱いで軽装で下山開始。山頂直下の短い区間のみ立ったハイマツだが、すぐにシラビソに切り替わった後は延々とシラビソ樹林が続く。何度も歩いた道だし近年は利用者が増加しているコースなので赤テープが無くても迷うことはない。

 2重山稜が登場すると2320m肩のテント場適地は近い。さきほどの団体様のテントとツェルトが合計4張あったが、まだ他に張れるくらいの広さがある。まさに幕営適地だが水がないのが痛いところ。多少遠くても水場があれば相当助かるのだが。

 なおも深いシラビソ樹林の下りが続く。2240m肩直下で北斜面が崩壊して北側の展望が開ける場所があり、北岳、農鳥岳や大篭岳を見渡せる。展望があるのはここだけでこの先は白河内に下るまで展望は全く無い。日差しが遮られるので涼しいとも言えるが。途中、登ってくる単独男性とすれ違う。

 高度計で奈良田までの標高差を確認しつつ一定のペースで歩きつづけるが、標高が落ちると気温が上がってくるのでどんどん汗が増えてくる。最後のほうは濡れタオルで汗を拭きっぱなし状態になった。それでも奈良田の気温は23℃くらいで、体を動かさなければ快適な温度だった。しかし長時間体を動かすには高すぎる。

 標高約1600mの水場にはテントなし。この付近になると植生は落葉広葉樹林に変わる。さらに下ると照葉樹が目立つようになりちょっと暗くなる。もっと下ると唐松植林、そして杉の植林へと変わる。そして水力発電用導水管上部施設に出ると、北斜面にジグザグに付けられた巡視路を下っていく。ここまで来ればゴールは近い。

 最後に車道終点に出て白河内右岸に到着。ようやく標高差2000m近い長い下りが終わった。数年前は白河内を渡渉したが、今は川を突っ切る仮車道ができていて、道の両側には飛び石にちょうどいい石の列が積まれているのでそれを利用させてもらう。白河内の流れはダートの車道上を流れているが、広く浅く流れるように工事がしてあるので増水していなければ車両の通行は充分安全に行える。対岸に渡って水浴びし3日間の汗を洗い流した。足を水につけると冷たくて気持ちいい!!

 吊橋を渡って対岸の県道に出ると、片側の路肩は路上駐車の列で埋め尽くされていた。やはり芦安が使えない今の状況だと奈良田の正規の駐車場では入りきれないようだ。お盆までに林道が復旧しない場合、お盆の奈良田はどうなってしまうのだろうか・・・。

 駐車場に戻って車を日陰に移動、テントを虫干ししながら着替えて暑い下界に向かった。

 

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